古典B 10〜大江山いくのの道
〜話に出てくる助動詞〜
けり(過去・詠嘆)ず(打消)
る・らる(受身・尊敬・自発・可能)
たり(存続・完了/ 断定)
らむ(現在推量・現在の原因推量、伝聞、婉曲・推量)
べし(推量・意志・適当・当然・強い勧誘 命令・可能)
〜本文〜
①和泉式部、保昌が妻にて、丹後に下りけるほどに、京に歌合ありけるに、小式部内侍、歌詠みにとられて詠みけるを
保昌…藤原保昌
丹後…今の京都の北部
歌合…歌人たちを分け勝負を決めた遊び
小式部内侍…和泉の娘、歌人。
②定頼中納言たはぶれて、小式部内侍、局にありけるに、「丹後へ道はしける人は参りたりや。いかにも心もとなくおぼすらん。」と言いて、局の前を過ぎられけるを、
局…殿舎の中で、仕切りをして設けた部屋。
心もとなし…じれったい。不安だ
おぼす…「思う」の尊敬
たはぶる…ふざける。からかう。
③御簾より半らばかり出でて、わづかに直衣のそでをひかへて、
御簾… 貴人のいる部屋のすだれ
直衣…平安時代の貴族の服。
ひかふ…引き止める。おさえる。
④大江山 いくのの道の 遠ければ
まだふみもみず 天の橋立
と詠みかけけり。
詠みかく…歌を詠み、相手に返歌を求める。
⑤思わずに、あさましくて、「こはいかに、かかるやうやはある。」とばかり言ひて、返歌にも及ばす、袖を引き放ちて、逃げられけり。
あさまし…驚き呆れる。意外だ。
かかるやうやはある…こんなことがあってもよいものか。
⑥小式部、これより、歌詠みの世に覚え出で来にけり。
覚え…世間から思われること
⑦これはうちまかせての理運のことなれども、かの卿の心には、これほどの歌、ただいま詠みいだすべしとは、しられざりけるにや。
うちまかせての…ありふれている。
理運…当然そうなるべき。