古典B 8〜 検非違使忠明(けびいしただあきら)のこと
〜話に出てくる助動詞〜
けり(過去・詠嘆)
む(意志・推量・仮定 婉曲・適当・勧誘)
たり(完了・存続・継続・並立)
なり(断定・存在)
る(受身・尊敬・自発・可能)
〜本文〜
①これも今は昔、忠明といふ検非違使ありけり。
②それが若かりける時、清水の橋のもとにて京童部どもと いさかひ をしけり。
京童部…血の気の多い、京の市中の若者たち。
いさかひ…けんか。言い争い。
③京童部手ごとに刀を抜きて、忠明けを立てこめて殺さんとしければ、
立てこめて…取り囲んで
④忠明も太刀を抜いて、御堂ざまに上るに、御堂の東のつまにも、あまた立ちて向かひ合ひたれば、
御堂…寺院または仏堂の敬称。
東のつま…東側の軒下。
あまた立ちて…何度も。たびたび。
⑤内へ逃げて、蔀のもとを脇に挟みて前の谷へ踊り立つ。
蔀…神殿造りなどで用いる建具。
柱の間に入れる戸。
⑥蔀、風にしぶかれて、谷の底に、鳥のゐる やうに やをら落ちにければ、それより逃げて往にけり。
風にしぶかれて…(蔀が)風に支えられて。
ゐる…すわる。しゃがむ。
やをら… 静かに。おもむろに。
⑦京童どもを見おろして、あさましがり、立ち並みて見けれども、すべきやうもなくて、やみにけりとなん。
あさましがる…驚きあきれはてる。びっくりする。